…放課後、高等部にある3年生の棟に来た。お礼は言わなくちゃいけない、それは分かってるけど。私の事を知って、利用するためなのかもと思うと怖くなる。私は何でも知る事が出来るから。違うと分かっていても、完全な否定は出来ない。
廊下でぼんやりと立ってる牧野先輩を見つけた。窓を見つめて、ただぼんやりとしてる。本当によく分からない人…
「…先輩」
私が声を掛けると、少し嬉しそうにこっちを向いた。
「何?」
「…お礼が言いたくて、お花の。ありがとうございました」
頭を下げると何故か頭を撫でられた。頭を上げても、変わらず続けている。嬉しそうに、何が楽しいのだろう?
「…どうして、私に花をくれたんですか?」
その質問に牧野先輩は手を止め、不思議そうに首を傾げる。理由を知っていても聞きたかった。何を思って私を気に掛けているのかを…
「君が悲しそうな顔をしているから。ずっと見てきたから、知ってる。俺は笑顔が好きなんだ。だから、皆を笑顔にしたい」
風が教えてくれた事と変わらない答え。信用してもいいのか、まだ分からないけど。その返答を聞いても、私は笑顔にはなれなかった。