そんな時、唯が俺の音楽に合わせて歌いたいと言ってきた。俺は2つ返事で了承した。唯との時間を作れるほど、嬉しい事は無いから。唯の歌は俺の演奏よりも上手くて、絵を描いてる時よりも、すごく楽しそうで生き生きしてた。たぶん絵を描くよりも歌う方が好きなんだろうなって思ってた。唯が歌ってくれるおかげで、好きじゃなかったピアノが楽しく思えるようになった。
だけど、その時間は長くは続かなかった。たくさんの人が唯の批判を言ってたんだ。唯の歌が俺の演奏を駄目にするとか、ひどい中傷を俺の知らない所で言われてた。唯が歌う時以外は全然楽しく演奏出来なかったのが原因だと思う。それに気付いたのは、唯の声が出なくなってからだった。精神的な問題だったらしい。俺は唯が大変な時に何もする事が出来なかった。だからなのか、唯は俺を避けるようになった。嫌になっちゃったのかは分からないけど、その答えを聞く事も出来ず俺達は疎遠になってしまった。